不動産は面白いーー巣の確保から投資に至る過程で得た学び

アカウント名「家売る女」のど真ん中ブログ:不動産遍歴から得た学び

不動産ガチャ

2023年東京のお正月は晴天続きだった。町は静かで、午前10時過ぎ、陽ざしが射した道路の暖かい部分を選んでゆっくり犬の散歩をする。犬は日当たりなんてお構いなしに臭いにつられて右左。

 

昨年まで、年末年始は長野県白馬村で過ごすことが多かった。気温は東京よりずっと低いが、雪の量が違う。前夜に雪が降ると、朝、家から出るのにまず雪かき。同じ日本でも、自然環境が厳しい土地で生まれ育つこともあるのだ。出生地ガチャ。アフガニスタンに生まれた女性が教育機会を奪われるのも出生国ガチャ。世の中、運不運がある。

 

晴天の東京での散歩。いつもと違う道を選んで、豪壮な邸宅がどんどん新築されていることに気づいた。私が築30年ほどの中古住宅をリフォームしようと施工業者を探していた頃、近所にちょっとおしゃれな平屋和風住宅があり、手がけた工務店に連絡をしたことがある。その家はすでに3階建ての要塞のような家に建て替わっていた。敷地一杯に建て、植栽は表に1-2本程度、土の部分を少なくするのは雑草管理には楽そうだ。見上げれば、屋上庭園があるようで、木々の先が少し見える。平屋住宅の持ち主が土地の値上がりや家族構成の変化等で売ったのだろうか?表札の名前は変わっていた。

 

この建て替わった家をはじめテレビドラマに出てくる社長宅のような家もあちこちにある。お金持ちがいるのだ。

 

有権者が入れ替わった土地家屋とは別に、昔からの土地持ち一族らしい、同じ苗字の家が何軒も続いている。同じタイプの戸建て賃貸住宅数軒にしたり、低層マンションに建て替え、その一角に一部屋を元の土地の所有者が自分用に確保したりしている。

 

広い敷地に苗を育てて売っていた近所の老夫婦は2-3年前に苗木屋を辞めた。昨年から低層マンション建設が始まった。駅から徒歩5-6分の好立地だから、マンションにしませんか?と業者が話を持ってきたのだろう。老夫婦は近くに住むところを確保してもらって、毎日のように夫婦で駅前のスーパーに通っている。ほとんどの面倒なことを業者にまかせ、完成したマンションの一番気に入った住戸に移るのだろう。

 

解体が終わった更地の広いこと!戦前、東京市荏原郡碑衾(ひぶすま)村、九品仏村、碑文谷村等々と呼ばれた農地だったのだろう。今もところどころ生産農家が残っている。土地持ちっていいなあ。生産農家なら固定資産税、相続税等税制上も優遇されてきたのだろう。これも親ガチャ?

事業で成功し、新たに土地を買って要塞のような家を建てる新規の富裕層と、昔からの土地持ちが混在している地域だ。

 

パークなんたら、パークハウスなんたら等々業者がプラニングしたマンションがほとんどだが、ひとつ目を引く個性的な賃貸住宅があった。1960-70年代っぽい白いモルタル塗りで、バルコニーは黒いスチールだったが、植栽の手入れが素晴らしく、比較的都心に近いのにターシャ・テューダーのようなカントリー風の庭に古木でできた素朴な物置小屋があり、古くてもおしゃれで、この「○○ハイツ」に住みたいという人もいたという。数年前、建て替えが始まる前、たまたま表で草花の手入れをされていた上品な婦人と話す機会があった。すべての入居者の退去も終わり、まもなく立て替えということだった。庭はプロにプラニングしてもらったそうだが、その後の何十年にもわたるオーナーの日常的な手入れが、あのアパートを魅力的なものにしていたのだ。

 

建て替え後は、オーナーの住戸が一階、二階には賃貸住戸が2戸しかないこじんまりとした建物になった。以前は3階建て程度ですべての敷地をすべてこのハイツに利用していたが、奥の土地は売却されたようで、別の豪邸が建っている。敷地が広いので旗竿地でも竿の部分が十分すぎるほど幅広く、奥まっていることがむしろ価値を高める堂々たる邸宅だ。

 

オーナー住戸プラス賃貸住戸の二階建ては、狭くなった分余計に細部への配慮が行き届き、レンガが積み上げられた、カントリー調が更に洗練されていた。近くの建て替わった賃貸マンションのいくつかは業者の「入居者募集中」の看板がでているが、このレンガ造りの賃貸住宅は戸数が少ないという点もあるが満室のようだ。

 

正月明け早々建設工事を急ぐ近所の元苗木屋のマンションは、どのようなマンションになるのだろうか?

先祖から受け継いだ土地でも、自身の創意工夫で魅力的な賃貸マンションにする人と、業者丸投げの人がいる。私は不動産に通常以上の付加価値を付けることに知恵を絞る人が好きだ。建物、庭を魅力的にすれば、町の景観も魅力的になる。

 

                               (以上)